Vividcar Premium

歴代 M マシンに昂ぶる

BMW M Gmbh
70 年代、レースの激化に負われた BMW は社内の 1 部門では対応しきれなくなりました。予想以上に負担となるノウハウ、マンパワー、コスト・・・。
そして BMW はレース部門を切り離し、子会社化することを決定します。集められた人員は当然スペシャリスト揃い。なかには後にクライスラーの社長を務め、現在は北米 GM 会長となったボブ・ルッツもいたのですから、精鋭揃いといってよいでしょう。

1972 年、BMW Motorsport Gmbh(後に BMW M Gmbh に社名変更)はこうして設立されました。

その M 社がいままでにリリースしてきたロードカーを紹介します。M1 以外は BMW のモデルをチューンしたクルマですが、まるで生き物のような息吹を感じるマシンばかりです。
文=柴田康年(VividCar.com) 写真提供=BMW ジャパン

 

m1f280.jpg
いかにもジウジアーロな M1 の佇まい。こう見えてエンジンの後ろには使い勝手のいいラゲッジスペースがあります。
E26 M1

 3.0CSL でメイクス・チャンピオンを獲得した BMW は 1976 年、シルエット・フォーミュラと呼ばれていたグループ 5 に進出します。しかし、ポルシェ 935 に見事なまでに惨敗。

 そこで、完成度の高いエンジンはそのままに、大柄な FR ボディを捨てミドシップの完全ブランニュー・マシンの製作に着手します。そして誕生したのが、M1 なのです。

 基本設計は、ジャンパオロ・ダラーラ博士。デザインは、ジウジアーロ。彼らしい合理的で美しいデザインですよね。

 エンジンは、3.0CSL では 30° 傾けて搭載されていた(低重心化のため)のですが、左右にスペースのないミドシップ・エンジン・コンパートメントに合わせてグイッと直立させ、そのままでは背が高すぎるためにドライサンプ化。ヘッドは DOHC 4 バルブに換装。
 こうしてできあがったのが、M88 型 3.5 リッター直列 6 気筒エンジン。先頃引退した、パウル・ロシェの作り上げた名機です。

 残念ながら、生産を担当することになっていたランボルギーニとのごたごたで計画は上手く進まず、レギュレーション変更により活躍する場を失ったこともあって、わずか 450 台前後で生産は中止されてしまいます。レーシングカーとして生を受けたマシンの宿命でしょうか。

 しかし M1 用 M88 型エンジンは設計変更を繰り返し、恐ろしいほどの生命力をもって 1990 年代中盤まで生き残ることとなります。

e30m3_280.jpg
こちらは普通のE30 M3 。
e30Evo_280.jpg
こちらはスポーツエボリューション。

E30 M3

 80 年代のツーリングカーレースは、さまざまなメーカーが鎬を削っていました。

 そんな中で、メルセデスはグループ A で排気量 1.6 ~ 2.5 リッターのディビィジョン 2 クラスに 190 2.3-16 で参戦します。

 その闘いの中へ BMW Motorsports Gmbh が送り込んだのが、E30 ボディーに設計変更を行い、F2 用のエンジンを押し込んだ E30 M3 でした。

 このエンジンは、M12 系と呼ばれるモノですが、元をたどれば M88 型直列 6 気筒エンジンから 2 気筒切り落としたモジュールエンジンです。
 ちなみに、BMW はこのエンジンをベースにターボチューンを施して F1 マシンに載っけてました。オーナーは、自分のマシンが F1 と繋がっていたことを密かに誇らしく思うのでしょうか。

 この後、両メーカーは熾烈な争いを繰り広げました。当時のツーリングカー規定では、500 台生産すれば正常進化版として認めていたこともあって、次々に 500 台限定車を発表していったのです。

 BMW は、メルセデスの エボ I に対抗して E30 M3 スポーツエボリューションを登場させました。エンジンは 2467cc にまでスープアップし、238ps / 7000rpm を発生させるまでになりました。

 このスポーツエボリューション、外観上の変更点といえば、可変式リヤスポイラー以外は恐ろしくマニアックな変更のみです。ノーマルに比べ 1 mm 薄いサイド&リヤガラスや、ボンネットと左右フロントフェンダーの隙間同士に敷かれたゴムストリップ、ほんの少し大きいフロントホイールアーチなど。

 スポーツエボリューション仕様に変更されたノーマルモデルも多く、ぱっと見ても判別できないかもしれません。わかるひとにはわかる、という通好みのマシンですね。

 高価格にもかかわらず、スポーツエボリューションはツーリングカーの規定を上回る 600 台ほどが生産されたそうです。

E36M3_280.jpg
これは前期型の E36 M3。
E36 M3

 90 年代に入り、M3 は大人のクーペに路線を変更することとなります。E36 ボディが大きくなったことから、4 気筒ではなく BMW らしい 6 気筒が搭載されることになりました。

 直列 6 気筒へと変更になったエンジンは、幻の V12 を半分にぶった切った通称 "ライト・シックス"。石油ショックの影響でお蔵入りになった 745i 用 V12 エンジンの片バンクを、3 リッターとしたエンジンです。

 後述しますが、エンジン屋さんを自負する BMW では、その歴史の中に V12 という言葉が本当に多く出てきます。V12 にこだわったからこそいまの 6 気筒エンジンがある、といってもいいくらいなのですから。

 後期モデルになって、本家 BMW の 3 シリーズにはアルミブロックが積まれることになっても、E36 M3 には強度の出る鋳鉄ブロックのまま。軽くはなっても強度に不安のあるエンジンをレース用ベースエンジンとして採用できなかったのでしょう。そういえば GT-R の RB26DETT も鋳鉄のままでしたね。

 前期型は、3 リッターの S50/B30 型エンジンで無段階可変吸気カムシャフト機構 (VANOS)を搭載し、286ps / 7000rpm と 32.6kgm / 3600rpm を発生。

 後期型は、3.2 リッターにまで排気量を上げた S50/B32 型エンジンで吸気カム排気カムの両方ともコントロールするダブル VANOS を搭載。321ps / 7400rpm と 35.7kgm / 3250rpm を発生します。

E46M3_2802.jpg
ノーマルモデルのE46 M3。
E46M3CSL.jpg
体中にカーボンパネルを纏う E46 M3 CSL 。

E46 M3

 E46 M3 がもっとも困ったことは、その車重の増加でした。E36 M3 に比べて 110Kg も増えてしまったのです。車体剛性のアップを目的とされたのですが、これは痛い。

 そこで、まずは定番のエンジン出力向上。シリンダー間をギリギリまで薄くして、排気量を 3246cc まで上げたのです。この結果、345ps / 7900rpm と 37.2kgm / 4900rpm までに高めることに成功しました。ヘッドを開けてシリンダー壁を見ると、その薄さに驚くはずです。

 しかし、BMW はまだやり足らなかったようで、3.0CSL 以来の呼称 CSL を復活させることにします。CFRP のボディーパネルを随所に使い、徹底的に軽量化した M3 CSL を登場させたのです。

 ノーマルの E46 M3 に比べてじつに 110kg もの軽量化を実現した M3 CSL は、エンジン出力をさらに上げてきます。その作業の一端を、ボンネットの下の CFRP 製の大型エアコレクターに見ることができます。
 これ以上の排気量アップを見込めなくなったため、いかに空気を取り込んで、いかに効率的に爆発させるかに全力を注いだようです。
 細やかなエンジンマネージメントと合わせ、ついに 360ps / 7900rpm という出力を発生させるまでになりました。

 E46 M3 CSL は、SMGII のみの設定です。これは BMW からのあたらしいスポーツに対する回答なのでしょう。6MT よりシフトラグの短い SMGII が最適なのだと。


Mcoupe&road.jpg
M coupe & M roadstar

 Z3 の販売を期にバリエーション拡大のため生産された Mcoupe と Mroadstar ですが、機械的には E36 M3 と大差はありません。

 ただし、リアセクションに関しては E30 のセミトレーリングアームのリアサスを採用している。しかし、重量配分の適性化が計られたために、運動性は M そのもののようです。

 元 F1 ドライバーの片山右京氏が、M coupe を「良くできてますよね」と誉めていたのを思い出します。

E12M535i_280.jpg
エアロパーツが迫力の M535i 。
E28M5_280.jpg
正真正銘の E28 M5 。
E12 M535i / E28 M535i / E28 M5

 ここの分類は、少々複雑です。

 なぜならば、M535i は M のバッジをつけていながら 635CSi と同じノーマルエンジンを積みエアロパーツを装着したスポーツパッケージ仕様のようなモデルだったからです。これは本家 2 代目の 5 ボディーである E28 になっても生産されました。

 しかし、M5 になるとエンジンは M635CSi と同じ M88 型直系の S38 / B35 エンジンを搭載します。BMW Msport Gmbh のエンジンをビッグセダンで味わえるようになったのは、このモデルからなのです。

 M535i は M5 とは違う M モデルなのですが、M635CSi は M6 と同じだと思っていただいてかまいません。面倒ですよね。

 外観はほとんど変化ありませんので、ボンネットを開けなければ判別は難しいでしょう。

 E28 M5 は、M24 M6 とほとんど変わらない機械を積んだ "羊の皮を被った狼" の元祖ですね。

E24M635CSi_280.jpg
M6 こと M635CSi 。
M6 = M635CSi

 BMW のクーペ、その中でも世界一美しいといわれた 6 シリーズ。子供のころはわからなかったその美しさ。大人のクーペにだけ漂う何ともいえないセクシーさを感じます。

 M6 という名前は、日本などの限られた地域でのみ使われた呼称です。本国やヨーロッパでは、M635CSi とのみ呼ばれていたようです。

 M535i に続き Msport 社 3 台目のロードカーとしてリリース。エンジンは、直立していた M1 用 M88 型からまたしても 30° 傾けられウェットサンプに戻されました。
 エンジン型式は、S38 / B35 と名称を変え、この後 M モデルのエンジンには伝統的に "S" の文字がつけられるようになったのです。

E34M5_280.jpg
E34 M5 。
E39M5_280.jpg
E39 M5 。
new_M5.jpg
NEW M5 。
E34 M5 / E39 M5

 5 シリーズが 3 代目に進化したことを受けて、E34 M5 は 88年のデトロイトショーでデビュー。このE34 M5 は大きく、初期型・中期型・後期型と3 つにわけられます。

 3535cc の S38 / B36 型エンジンは 315ps を発生しました。中期型の S38 / B38 型になると 3795cc になり 340ps を発生、後期型はエンジンはそのままにホイールを 18 インチに大径化、ミッションは ZF 製 5MT からゲトラグ製 6MT に変更。

 高性能スポーツツアラーとしての地位を揺るぎないものとしました。

 この E34 M5 の話をするときに忘れてはならないのが、ライバルの存在です。当時は W124 500E というポルシェの工場で生産されるメルセデスが存在し、どっちが上か ? という話で盛り上がったものでした。


 そして、E39 M5 の登場です。とうとう S62 / B50 型 4941cc V8 エンジンが載ることになり、ここで M マシンから "ビッグ・シックス" の血統が絶えることになります。その代わり、5 リッターの大排気量と 400ps / 6600rpm と 51.0kgm / 3800rpm のパワーとトルクをもたらすことになりました。

 1.8トンもの重量を感じさせずにリヤを沈めてバシューンとフル加速する様は、まさにロード・キングといった感じです。繊細に扱えば紳士的に振舞いますが、ひとたび右足に力を加えれば硬質なサウンドとともに荒々しくワープしてくれます。

 加えて、もうすぐリリースされる予定になっているのが、新型の M5 です。F1 の技術をふんだんに取り入れた 90° バンクの 5 リッター V10 は 507bhp / 8250rpm を発生。これだけの性能でありながら環境問題にも配慮してユーロ 4 にも適合しています。ヨーロッパでは、2005 年の春ごろから発売される予定です。

z8_280.jpg
E39 M5 と同じ V8 を積む Z8 。
850CSi_280.jpg
BMW 850CSi 。
M_F1_280.jpg
土屋圭市氏が「世界最高のエンジン!」と絶賛したマクラーレン F1 のレーシング・エンジン。写真は関谷正徳氏がル・マンで優勝したときのものです。



M のバッジを掲げない M 社製品

 BMW のマシンの中には、明らかに M 社の手が入っていながら M のバッジを掲げていないモデルが存在します。

 まずは Z8 から。このモデルは、E39 M5 と同じエンジンを搭載しています。ノーマルの V8 ではなく M 社の手が入った S62 / B50 。

 ただし、もともとアルミスペースフレームで作られたスペシャルボディとして生を受けたこともあってか、シャシーには M 社の手が入っておらず、これが M の名前がつかない理由かもしれません。


 次は、BMW 850CSi 。 5.6 リッターの V12 エンジンを搭載していたので、正しくは 856CSi かもしれませんね。

 M70 型 V12 エンジンは石油ショックでリリースできなかった幻の V12 のリベンジといったモデルで、7 シリーズと 8 シリーズに搭載されました。
 このエンジンに M 社の手が加わったのが S70 型 V12 エンジンで、本当は M8 に搭載されるはずでした。

 しかしこの M8 はお蔵入りとなり、その代わりゴードン・マーレイのこだわりの結晶 "マクラーレン F1 " に S70 / 1 型 6リッター V12 エンジンとしてリリースされました。

 ただこのクルマはあくまでマクラーレンのクルマであったので、BMW としてリリースしたものではない。そこでリリースされたのが、850CSi なのです。

 差別化のためかあまりチューンを高くすることもなく、排気量もほんの少し落とされましたが、いまのところ M 社の V12 を味わえるのはマクラーレン F1 以外ではこのクルマだけです。

最後に

 BMW というメーカーは、数あるドイツ車メーカーの中でも、もっともレース好きなメーカーといえるかもしれません。
 何しろ BMW とは、ドイツ語では「バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ」、英語に直せば「バイエルン・モーター・ワークス」の略なのですから。なぜに "エンジン屋" と呼ばれるかが理解できるでしょう。

 そんな BMW がレース活動のために設立した BMW M Gmbh 、ただのスポーツカーを作るわけがありません。

 咆吼するエンジン、鋭いピックアップ、並外れた運動性能。たしかに普段の生活には必要がないかもしれません。しかしたとえそれが万人に受け入れられなくとも、レーストラックからそのまま送り込まれたような、魂の震え上がるマシンを作り上げるのだ、そんな気概を M 社のマシンたちから感じるのです。

 しばらくの間、軽やかなステップを踏みながらワインディングを駆け抜ける M3 の夢を、私は見ることとなるでしょう。

 あなたは、どうでしょうか?

条件で探す

メーカー
車種
価格帯
所在地
走行距離
修復歴

注目キーワード検索

" title="0 Photos" rel="tag" style="font-size: 10px;"><b><a href="http://blog.livedoor.jp/nocartrouble/archives/51283920.html" target="_blank"> こちらでもご覧いただけます。 お問い合わせはお気軽に06-6533-5045、もしくは
こちらまでご連絡くださいませ。 クルマ談義だけでも大丈夫です(笑)" title="0 Photos" rel="tag" style="font-size: 10px;">このクルマの詳細や解説は<b><a href="http://blog.livedoor.jp/nocartrouble/archives/51283920.html" target="_blank">こちら</a></b>でもご覧いただけます。 お問い合わせはお気軽に06-6533-5045、もしくは<br><b><a href="mailto:0-car-trouble@at-one.co.jp">こちら</a></b>までご連絡くださいませ。 クルマ談義だけでも大丈夫です(笑)